ディアスポラ

ディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF)

ディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF)

グレッグ・イーガンの新刊、ようやく読み終わりました。恐ろしい小説でした。小説で扱われている題材自体は、解説にも書いてある通り目新しいものではないのですが、イーガンが扱えばこうも凄まじいものになるのかと思いました。難解さも凄まじいものになってますが。
ソフトウェア化された人間、市民が動作するポリスと呼ばれるコンピュータのなかで、親を持たない市民である<孤児>が精神発生により生まれてから、自意識を持つまでを非常に克明に描いた第一章をはじめ、ポリス市民と肉体人の交流、機械の体を持つグレイズナー中性子バースト、宇宙進出計画<ディアスポラ>、統一理論、想像を絶した地球外生物、と一つ一つで長編がかけそうな位濃い内容をこれでもかという感じで詰め込んでます。
なによりすごいのが、例えば精神発生の過程などを読んでいるとああ、こうしたら確かに自意識を持つソフトウェアを作れそうだなと思わせてしまうところです。普通だったら簡単に流してしまうような部分が、どれも逃げがなくきっちり書かれています(と、思います)。それゆえに難解になっているんでしょうけど。
空間スケールと時間スケールとアイデアの大きさではなかなか類を見ない小説だと思います。ただある程度SFを読みなれた人でないと最初の部分で挫折しかねない感じですが、話の流れを見失わない程度に読み流せば十分楽しめると思います。面白いです。