スターキング

エドモンド・ハミルトンスペースオペラ。ハミルトンはもともとスペオペで有名なのですが、僕がこれまでよんだ彼の作品は、奇想コレクションのフェッセンデンの宇宙、反対進化だけであり、どちらかというとアイデア小説を書く作家としての側面しか知りませんでした。フェッセンデンの宇宙の夢見る者の世界や、反対進化のアンタレスの星のもとに等はスペオペとしての力量を見せてはいますが、反対進化やむこうはどんなところだい? の印象が強かったのですが、さすがというかスターキング、面白いです。
二十万年後の世界の科学者が、歴史研究したいから心と心を交換しようと云うメッセージを受け入れて交換したら、科学者は実は星間帝国の王子であり、陰謀に巻き込まれて、首都に戻ってみれば政略結婚させられるは恋人は出てくるは果ては暗殺の嫌疑をかけられるはさらわれるわ。しかも自分が精神交換して別人であることはかくしておかなければならない。そして誰もが恐れる秘密兵器、ディスラプターの秘密とは……というストーリー。
通俗娯楽SFの極みです。最先端の科学研究結果を入れて、先鋭的なビジョンを提供するようなハードSFもいいですが、こういう馬鹿馬鹿しいまでに大味でワクワクするようなSFもやはりいいものです。この手の冒険SFは昔の作品のほうが面白いと思います。枝葉末節にこだわることなく、大上段でばっさり切ってしまうような豪快なおもしろさは全般的に昔の作品のほうが上ではないでしょうか。レンズマンを読んだときにも思いましたが。最近のSFはそんなに読まないので何とも言えないのですが。
さて、ここで東京創元社から出ているハミルトンのキャプテン・フューチャー全集に手を出すかが問題なわけです。一冊千二百円で全十二巻。読みたいことは読みたいんですけど、場所と金が……。いや、場所はまあいいんですが、金が……。