パラダイス

パラダイス―楽園と呼ばれた星 (ハヤカワ文庫SF)

パラダイス―楽園と呼ばれた星 (ハヤカワ文庫SF)

マイベストSF上位五位に入る「キリンヤガ」のマイク・レズニックのやはりアフリカもののSF。アフリカものとは云ってもアフリカが舞台ではなく、アフリカをモチーフにした、ペポニ、スワヒリ語で「楽園」という名の物語です。
未開の惑星が人により発見され、開拓され、やがて人の手を離れていく現在に至る歴史を、生き証人の話を聞く、歴史作家の視点で描く年代記SF。未開の惑星に夢を抱き、存在しない楽園を求めて入植してきた、ハンター、農民、そして闘争の時代にやってきた人たちの話と、作家自身の目を通じて、人間が入植したために滅びていく惑星を淡々と描いています。起伏が無く、それぞれの人間がそれぞれの立場から自分たちから話すことによって、むしろハッキリと星の絶望が浮き彫りになる、そんな話でした。
まえがきにそれとなく、というか割と露骨に書いていますが、この話は現実のケニアをモチーフにしているようです。現実の歴史(に限らずですが)を誇張して描くという手法が特にうまくいっているSFではないかと思います。
SF好き以外にもお勧め出来るのですが、絶版……。